日本
院政期仁和寺文化圏和歌論
日本
院政期仁和寺文化圏和歌論
- 出版社
- 汲古書院
- 出版年月日
- 2025.05
- 価格
- \9,900
- ページ数
- 346
- ISBN番号
- 9784762936975
- 説明
- 覚性・守覚二人の御室を中心に、仁和寺文化圏の和歌活動とその特徴を明らかにする。
【序章より】(抜粋)
筆者が本書で目指したことは次の二点である。
一、寺院制度や歴史学の視座から院政期仁和寺の和歌・歌書・和歌行事を分析し、これらの生成背景と催行意義を解明すること。
一、和歌・歌書・和歌行事を分析する過程において、また分析によって得られた結論から、院政期仁和寺史を再現すること。
筆者は寺院文化の諸相の解明を企図しており、その一歩として、本書は文化圏として認識されている仁和寺に注目する。そして、仁和寺の和歌活動が爛熟期を迎えた院政期を中心に、和歌・歌書の生成背景や和歌活動の意義を解明し、あわせて仁和寺史を再現することを目指す。
仁和寺は、宗教・政治また文化面において重要な活動を果たしたが、個々の僧の経歴や仁和寺そのものの活動すら未詳・未評価の部分が多い。一方、仁和寺で作られた和歌・歌書には、何らかの形で仁和寺の歴史や仁和寺僧の生活が反映されている。裏を返せば、和歌作品を分析することにより、僧の生活や仁和寺の歴史の一端が復元可能となるということである。本書は和歌や歌書また断簡や歌会歌合などを取り上げ仁和寺史の部分的な復元を行うが、述懐歌に重きを置いて分析を進めていく。これは比較的実体験が込められやすい詠歌形式であり、仁和寺を立体的に捉える視座となりうる詠歌だからである。仁和寺が院政期の宗教界において高い位置を占めていることは疑いないが、仁和寺が権威を保つには多くの努力があり、苦難があった。述懐歌はそうした側面を反映しているのである。もちろん、和歌は文学であるため、虚実が織り交ぜられている。その虚構を寺院制度や歴史学的視座によって明らめ、「事実」を見出だすことにより、歴史学・宗教学面に重要な情報を提供することを目指す。