日本
南宋江西吉州の士大夫と宗族・地域社会(汲古叢書)
日本
南宋江西吉州の士大夫と宗族・地域社会(汲古叢書)
- 出版社
- 汲古書院
- 出版年月日
- 2020.08
- 価格
- ¥11,000
- ページ数
- 441
- ISBN番号
- 9784762960604
- 説明
- 本書は、南宋時期における河西吉州の士人・士大夫が、地域社会と関わりながら、どのように自己と家族・一族の生き残りを図ろうとしたのか、ここ一〇年ほどに亙って考察した諸論考から成り立っている。
宗族や地域社会に関する関心は、一九八二年に「宋代史研究における宗族と郷村社会の視角」(『名古屋大学東洋史研究報告』八号)と題する研究史整理の論考を公表したとき以来、一貫して持ち続けていた。この論考は、戦後、日本における宋代史研究の主流を形成していた、地主・佃戸制を中心とする生産関係論的研究で、果たして、宋代という時代像を描き切れているのかという素朴な疑問に基づいて執筆したものであった。結論として、一面的な宋代史研究から脱却するためにも、戦前から戦後にかけて多くの研究者を魅了してきた郷村社会や宗族といった側面に再び光を当てるべきだという提言をした。とりわけ、私自身は宗族に対して、強い関心を寄せていた。
還暦を迎えた頃から、初心に立ち返ろうとして、欧陽脩の郷里の、吉州出身の士大夫たちの文集を読み始め、読了する度に論考として纏める作業を行った。宋代、とりわけ南宋の吉州は、士大夫個人の文集が相当に残っていることが幸いした。当初は闇雲に論考を纏めていたけれども、取り立てて先行きの見通しがあったわけではない。何本書いても、纏まった結論めいたものが出てくるという信念も確信もなかったのである。それが、何とはなく、地域社会と士大夫、家族や宗族という幾つかの要素が繋がるのではないかと思い始めたのは、ここ二~三年ほど前からである。無論、それは単なる思い込みの可能性もあるのだが、一応の形になりそうだと感じて、一冊に纏めることにした。